はかりと検定制度

1.はかり使用と計量法

 日本の計量制度は、計量法を骨格として構成されています。計量法は、法定計量単位を定めているほか、「取引または証明」に係る計量の安全を確保するために、守るべき事項を定めています。この分野ではかりを使用する場合は、以下に述べる事項をふまえておく必要があります。


2.取引または証明にはかりを使用する場合の注意事項

 「取引および証明」に係る分野で、計量がいい加減に実施されると、信用を前提とする日本の社会が混乱し、経済や文化活動の基礎がくずれてしまいます。そのため、社会的にみて最低限度守らなくてはならない「決まり」を国は計量法で定めています。

 「取引および証明」に係る分野で守るべき「決まり」は次の3つです。

  1. 定証印もしくは基準適合証印が付されたはかりを使用すること。
  2. 使用中のものは期間が定められている定期検査に合格し、定期検査済証印の有効期間内にあること。
  3. 正しく使用すること、傾いたりしないなど設置場所等が適正であること、使用に当たっては0点をしっかり調整し、風袋引き等の操作を適正に実施すること。

 そのため、商店などで客に品物を計って売る場合、つまり商取引(あるいは証明)を目的としてはかりを使用するときには、以下の3項目に気を付けておく必要があります。

  1. 検定証印もしくは基準適合証印が付されているか。
  2. 定期検査済証印の有効期間を満了していないか。
  3. 使い方は適切か。はかりが傾いていないか、0点はしっかり調整されているか。

 なお、計量法の特例措置によって、一部のはかりは届出済証をもって検定証印とみなされますから、届出済証のシールの貼られたはかりの有効期間等については、はかり販売店または各都道府県の計量検定所、計量検査所等に問い合わせをして、以後の対応をあらかじめ心得ておいて下さい。

 「取引」とは物または役務の給付を目的とする行為のことです。商業取引と考えて不都合がありません。一般の商店などにおけるはかりの使用は「取引」に関する行為となります。商品の内容量についての計量結果の表明に関しては、取引当事者間における計量およびその計量結果の表明は「取引」上の計量であり、取引当事者以外の第三者による計量およびその計量結果の(両者又はいずれかの一方の)当事者への表明は「証明」です。「取引または証明」以外の用途にはかりを用いるのであれば、検定証印付きあるいは基準適合証印付きである必要はありません。以下に具体例をあげておきます。

〔検定証印付きあるいは基準適合証印付きで定期検査の受検を要する使用事例〕

  1. 商店等が顧客に品物を計って売る場合。
  2. 計量証明事業者が証明書を発行することを目的として計る場合。
  3. 医師の健康証明書に記載するために体重を計る場合。
  4. 体重別等のスポーツ競技において選手の体重を証明するために計る場合。
  5. 学校等における体重計=学校、幼稚園、保育所又は福祉施設等の体重測定に使用される非自動はかりであって、その計量値が健康診断票等に示され通知、報告されるものについては、証明における計量に該当する。
  6. 小包郵便物および一般郵送事業者の宅配便の取次業者の取次店における料金特定のための計量は、取引における計量に該当する。

〔検定証印付きあるいは基準適合証印付きである必要のない使用事例〕

  1. 工場等の製造設備ライン等で製品の品質を高めたり、合理化等を目的としてはかりを用いる場合。
  2. 各種の試験・研究、薬品の開発等で超精密な計量を行うのにはかりを使用する場合。
  3. 私的に各種の品物の質量の差異を調べる場合。
  4. 料体重計=目安程度のものであれば証明における計量に該当しない。


3.取引または証明分野での定期検査

 「取引または証明」にはかりを使用する場合には、検定に合格したものであることが条件となります。はかりを検定証印付きあるいは基準適合証印付きで購入した場合には、そのまま使用してかまいませんが、有効期間が定められていて、翌年以降その地域で定期検査が実施される場合には受検し、これに合格する必要があります。定期検査の合格条件は検定公差の2倍となっています。これを使用公差といっていますが、日常の使用時でもこの使用公差の範囲を超えないようにチェック用分銅などを載せて管理することが必要です。使用公差を超えているようでしたら、取りあえずは馴染みのはかりの専門店に連絡して性能を確かめ、具合が悪ければ代替えのはかりを借り受けるとよいでしょう。


4.定期検査の実施主体

 定期検査の実施主体は都道府県知事または特定市町村の長であり、一般的には都道府県の計量検定所および市の計量検査所です。2000年(平成12年)、地方分権一括法の施行により、計量に関する国の権限が大幅に地方公共団体に移譲されました。計量行政のほとんどが国の機関委任事務であったものが、自治事務に移行、一部は法定受託事務になりました。


5.指定定期検査機関

 知事または市町村長から指定定期検査機関として指定を受けた計量協会などの公益団体は、定期検査の業務を知事または市長村長に代わって実施できます。 指定定期検査機関は1993年(平成5年)に改正・施行された計量法で創設された制度で、計量関係の公益法人が県の指定を受けて定期検査を実施しています。


6.計量士による代検査

 計量法では定期検査に代わるものとして、計量士による定期検査の代行検査制度を設けています。計量士による代行検査は、期限内であれば、検査の実施時期をはかり使用者の業務上の都合ににあわせて選択できるなど、使用者に好都合なこともあって普及しています。


7.適正計量管理事業所における定期検査の免除

 計量法で定められた適正計量管理事業所の指定を受けると、事業場内で使用している定期検査対象のはかりの定期検査が免除されます。適正計量管理事業所には担当の計量士がいて、はかりを定期検査に適合する内容で適正に管理しています。計量管理事業所の担当計量士は、はかりの管理、検査等の状況を当該の役所に報告する義務を負っています。なお、薬品関係などの適正計量管理事業所などでは、生産工程で使用するはかりを取引・証明用と敢えてみなして、適正な管理を実施しています。